農薬検査部について
業務の概要
農薬取締法
「農薬取締法」は、農薬について登録の制度を設け、販売及び使用の規制等を行うことにより、農薬の安全性その他の品質及びその安全かつ適正な使用の確保を図り、もって農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与することを目的として定められています。
農薬の登録審査
農薬を製造・加工または輸入しようとする場合には、農薬取締法により、あらかじめ農林水産大臣の登録を受けなければなりません。農薬の登録申請は、登録申請書に各種の試験成績資料と必要に応じ農薬の見本品を添えてFAMICを経由して農林水産大臣に提出します。大臣は、FAMICに対し当該農薬について、提出された試験成績等の審査を指示します。
FAMIC農薬検査部では、農林水産大臣の指示に基づき、薬効、薬害、毒性及び残留性の面から、使用範囲、使用方法及び使用上の注意等を審査します。審査は、消費者庁や環境省による各種の基準値等(残留農薬基準値、水質汚濁に係る基準値等)に基づく必要があるため、農林水産省を通じて関係機関と連携しています。また、見本品については、品質を確認するためその物理的化学的性状や有効成分の含有濃度等の検査を実施します。これら審査や検査の結果は大臣に報告され、問題のない農薬については大臣により当該農薬の使用基準を設定のうえ登録が行われ、登録票が申請者に交付されます。
また、登録後も、農薬の有効成分ごとに定期的に最新の科学的知見に基づき登録を見直す「再評価」を実施することとしており、登録の際と同様、FAMIC農薬検査部による審査が行われます。
登録農薬の現状
農薬取締法が制定されてから、今日までに登録された農薬の累計件数は24,860件ですが、このうち現在登録されている有効登録件数は、4,059件(有効成分数は592種類)となっています。その内訳は殺虫剤が約25%、殺菌剤が約21%、殺虫殺菌剤が約8%、除草剤が約38%、植物成長調整剤が約2%、その他が約5%となっています。また、剤型別では、水和剤が約34%を占め、次いで粒剤、液剤、乳剤、粉剤となっています。
(令和6年3月31日現在)
登録のしくみ
※図中の用語は、改正農薬取締法第二弾施行版(令和2年4月1日以降に適用)に基づいています。
なお、農薬の登録を申請する者が提出すべき試験成績等の詳細については、農薬の登録申請において提出すべき資料について(平成31年3月29日付け消安第6278号農林水産省消費・安全局長通知)等で定めています。
立入検査
農薬登録後において製造された製品の品質が保たれていない品質不良農薬や農林水産大臣の登録を有していない農薬(無登録農薬)等の流通を防止するため、国は農薬取締法に基づき、農薬製造者、販売者及び農薬使用者への立入検査を実施しています。FAMIC農薬検査部では、農林水産大臣の指示により農薬製造者等に立入り、業務に関する帳簿等の検査を行うとともに農薬を集取し、それらについて品質、表示等の検査を行っています。
立入検査のしくみ
GLP調査
我が国では、農薬の登録申請時に提出される試験成績の信頼性確保のために、昭和59年からGLP(Good Laboratory Practice)制度を導入し、対象となる試験及び信頼性確保のための基準を農林水産省令(※)に定めています。
※特定試験成績及びその信頼性の確保のための基準に関する省令(平成30年農林水産省令第76号)(「電子政府の総合窓口(e-Gov)」へのリンク)
GLP制度とは、試験成績の信頼性を確保するための試験施設に対する監査制度で、FAMIC農薬検査部では農林水産省の指示により、試験施設の設備、機器、試験操作、記録及び保管の状況について調査を行っています。調査の対象とする試験範囲は、以下の72項目です。
毒性試験(急性毒性、慢性毒性、発癌性など) | 35項目 |
遺伝毒性試験(復帰突然変異、染色体異常など) | 4項目 |
環境動態試験(土壌、水など) | 6項目 |
物理的化学的性状試験(有効成分、製剤) | 2項目 |
原体組成等試験(原体組成、原体分析法) | 2項目 |
生態毒性等試験(魚類、ミジンコ類、藻類など) | 15項目 |
残留試験(作物、家畜など) | 8項目 |
(令和元年7月1日現在)
GLP適合確認のしくみ
農産物安全対策業務
農林水産省の指示により、FAMIC農薬検査部では、農薬の適正使用の推進、農薬のリスク管理に係る施策の企画立案のための基礎資料等を得ることを目的として、農産物の栽培農家等における農薬の使用状況等の調査点検及び農産物の残留農薬等の調査分析を行っています。
年度ごとの調査結果については農林水産省の以下のホームページで公表しています。
国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査結果について(農林水産省HP)
調査研究
科学の進歩が日進月歩の中、新たな科学的知見を反映しつつ適切な登録審査を行うためには、情報収集とたゆまない審査・検査技術の改良・改善が必須です。さらに、著しい速度で国際化が進んでいることから、諸外国や国際機関における農薬管理に関する取組に常に注意を払い、海外の状況の把握にも努める必要があります。そのため、FAMIC農薬検査部では、農薬の人畜・環境への影響、農薬等の品質・薬効等、残留農薬の分析、諸外国や国際機関の動向等についての調査・研究に取り組んでいます。調査研究の成果については こちら をご覧下さい。
国際調和への対応
国と連携し、農薬の登録制度を中心とした農薬管理に関する国際的な議論への寄与や、国際的な残留基準の設定などのために、OECD等の国際会議に参加するとともに、OECD、CODEX残留農薬部会等への政府出席者に対し技術的支援を行っています。
講師派遣
地方公共団体等からの要請に基づき農薬の登録制度、農薬の品質、安全性等に関する知識、情報を普及するため、講師を派遣しています。
国際技術協力
国際協力機構(JICA)や外国政府等からの要請に応じて、国等と連携し、要請元への職員の派遣、研修生の受入などFAMIC農薬検査部の持つ専門技術力を活かし国際技術協力に取り組んでいます。
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